※当コーナーは、秋野卓生弁護士のご協カをいただいております。
契約締結段階に入った当事者の関係は、何ら特別の関係のない者との関係よりも密接な関係にあります。そこで、このような関係にある者は、相手方に対し、損害を被らせないようにする信義則上の義務を負い、自らの責めに帰すべき事由により、その義務に違反して相手方に損害を生じさせた場合、一種の債務不履行類似の責任を負うことになります。
この信義則上の義務とは、具体的には、自己の先行行為に矛盾する態度を取ることは許されないという矛盾行為禁止義務、相手方が誤解に基づいて行動していることが分かった場合には、その誤解を指摘してその誤解を是正する義務などです。
このような法理を、契約締結上の過失の法理といいます。
ご質問のように1年以上の期間をかけて打合せを継続していた場合、住宅会社に契約締結を期待させて費用を支出させている可能性が高いので、契約が締結されると誤信したことによって生じた損害、即ち、実費を賠償する必要があります。

施主が建築業者との間で自宅建物の新築の工事請負契約を締結したが、建築業者が施主との打合せや面会の要求に応じなかったため、契約を解除し支払い済みの請負代金について不当利得として返還請求をしたという事案にて、東京高裁平成11年6月16日判決は、「確かに、建物の建築請負契約においては、建物を建築するという目的を達成するため、注文者と請負人が、建築確認、工事内容、工事の着工、工事の施工等に関し、工事の着工前に十分に意見を交換し合うことが必要であることは明らかであるから、右の目的を達成するのに必要不可欠な打合せを行わなければならないにもかかわらず、請負人が正当な理由なくして、注文者からの打合せ又は面会の要求に応じようとせず、それによって信頼関係が破壊されたと認められる場合には、注文者において請負契約を解除することができると解するのが相当である。」と判示しています。従って、施主からの要望にもかかわらず、打合せを拒絶し、信頼関係が破壊されたというべき事態に至った場合には、施主は債務不履行に基づく契約解除ができますので、この場合には住宅会社に違約金を支払う必要はありません。
但し、住宅会社に債務不履行が認められない場合には、注文者による解除は、施主都合解除(民法641条)となり、施主は住宅会社に生じた損害を賠償しなければなりません。

民法724条は「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする」と規定しています。
この規定により、当該瑕疵が不法行為に該当すれば、最長20年間、責任追及が可能となります。
最高裁平成19年7月6日判決は、不法行為責任が認められる場合について、「建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、設計・施工者等は、不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。」と判示していますので、建物の基本的安全性を損なう瑕疵については、瑕疵担保責任期間が経過していても、不法行為の時効到来までは補修費用を住宅会社に負担することを求めていくことが可能です。

民法209条1項は、土地の所有者は境界で障壁を築造するために必要な範囲内で隣地の使用を請求することが出来ると規定しています。
この「使用」には、隣地への立ち入りだけでなく、足場を組んだり材料を一時的に置いたりすることも含まれます。また、一時的な隣地の掘削といった形状を変更する行為についても、認められると考えられています。
この隣地使用請求権は、土地所有者が隣人に対し、隣地の使用を請求することができるという請求権であって、隣人の承諾を得ることができない場合には、裁判所に訴えて、承諾に代わる判決(民法415条2項但書)を求めなければならないとするのが判例・通説です。
したがって、実際には、まず隣地所有者等に対して隣地を使用する旨の事前の通知を行い、隣地所有者が使用を拒んだ場合は、承諾を求め訴訟を提起することとなります。
法律上は承諾料の支払い義務はありませんが、早期に工事を進めるため、少額の金額を支払い、承諾をしてもらうことは実務上は存在します。

民法234条1項の規定により、建物を建築する際には、境界線より50センチメートル以上の距離を保持する義務があります。
ただし、民法の規定と異なる慣習がある場合や、隣家の同意や条例による建築協定が有る場合、建築基準法65条が規定する要件を充たす場合には、隣地境界線から50センチメートルよりも少ない距離の配置で建物を建築することも可能です。
以上から隣家の同意を取り付けて境界線から50センチメートル未満の配置にて建築をするケースはあります。
この際、隣家へ承諾料を支払う法的義務はありませんが、少額の金額を支払い、承諾をしてもらうことは実務上は存在します。
承諾料の目安として、民法234条違反による損害賠償を命じた下記判決が参考になるでしょう。

もともと契約時に請負契約書に添付し、又は顧客に対して提示していた見積書の内容は、請負契約の内容となります。
従って、構造材、住宅設備機器その他の建材について見積書記載金額が、契約内容となりますので、この契約内容を変更するためには、住宅会社・顧客間の協議が必要です。
昭和48年頃に発生した第一次石油危機による資材等の値上がりを理由とした請負代金増額の請求に対し、東京高裁昭和56年1月29日判決は、請負人の請求により当然に代金額が増額されるものではないと判示し、あくまで契約当事者間にて誠実に協議を遂げ、適当な増額の措置を定めるほかないと判示しています。
第一次石油危機より今回の大震災のほうが遙かに「経済事情の激変」と言えるような深刻な事態となれば事情変更の法理の適用により、一方的に請負代金の増額が認められる判例が出る可能性もありますが、今のところ、一方的な代金増額を認める事はできず、住宅会社・施主間の協議によって請負代金変更の話しあいを行う事となると考えます。

この問題は、請負契約約款により解決する問題です。
民間連合(旧四会連合)工事請負契約約款には以下の条項があります。
今回の大震災は、不可抗力によって発生したものと言えます。
そして、請負人が善良な管理者としての注意をしていたとしても生じてしまった、天災地変による重大な損害と言えるので、民間連合約款ですと、2項により甲、すなわち発注者に増加した費用分を負担する事となります。
上記のような条項がない場合には、民法上の解釈に従うこととなります。民法の解釈上は、仕事完成前に、いずれの当事者の責めにきすことができない事由により、建築物が滅失・毀損した場合であっても、仕事完成義務が履行不能といえないのであれば、請負人は自分の負担で仕事をやり直さなければなりません。請負人には当初定めた報酬額で仕事を完成する義務があるからです(民法632条)。
従って、約款にて上述の取り決めをしていない場合には、やり直し工事費用は、請負人負担となる可能性が高いと言えるでしょう。

今回の大地震は、天災地変というべき事態であり、この天災地変を直接の原因として工期遅延が生じたとしても「請負者の責めに帰すべき工期遅延」は存在しませんので、住宅会社において工期遅延に基づく責任を負わない事となります。
従って、工期内に工事完成に至らなくとも、余計に発生した損害について施工会社に請求することはできません。
但し、工事再開後、相当期間内に工事が完成せず、請負人の責めに帰すべき工期遅延が発生した場合には、その分について損害賠償請求は可能となります。

まず、今回の震災は不可抗力と言うべきものであり、これにより資材調達が困難で工期が延びたとしても、「請負人の責めに帰すべき事由」による工期遅延とはなりませんので、住宅会社の債務不履行は存在しません。
従って、施主による契約解除の主張は、施主都合解除という事になりますので、施主は住宅会社に発生した損害を賠償して契約解除をすることができる、という事になります。

まずは、基礎設計に瑕疵がないかどうかご確認いただきたいと思います。
基礎設計に瑕疵があり、地震をきっかけとして不具合現象が生じたものであれば、当該建物の建築をした建築会社が瑕疵の補修をする義務を負うことになります。
他方で、もともとの基礎設計に瑕疵はなく、地震によって不具合現象が生じたという場合には、建築会社は瑕疵担保責任を負わない事となります。
この点、阪神・淡路大震災により、床の傾斜等の不具合が発生した事案で神戸地裁平成14年11月29日判決は、被告の本件建物の設計・施工・管理に過失があり、それを原因として、本件建物には阪神・淡路大震災前から被害の一部が発生し、阪神・淡路大震災後に被害が発生・拡大したことが認められるので、被告には損害を賠償する責任があると判断しています。

工務店やハウスメーカーが、「今なら20万円で、○○をグレードアップしますので、キャンペーンの申込みをしませんか?」というような、キャンペーンをはって、営業を行うことがあります。このキャンペーンと本体である請負契約は全く別の契約です。したがって、キャンペーンに申し込んだとしても本体の工事請負契約は成立しません。また、仮に本体の請負契約を締結した後、キャンペーンを使うことをやめるのも自由です。

工務店が契約書を交わさないで、営業活動の一環として、設計を行うこともあります。しかし、一定程度業務が進んだ場合には、工務店やハウスメーカーに対して、代金の支払義務が発生します。
裁判例では、黙示の契約成立や、商法512条にもとづく報酬請求権を根拠にして代金支払請求権を認めています。そして、設計図の作成・引渡の有無、打ち合わせの回数等を考慮して、それが営業設計なのか、請負業務なのかを判断しているようです。
この場合、支払うべき金額は、現実に実施した報酬に対する対価ですので、工務店の算定基準があれば、それが基準となります。なければ、業界内部の基準、従来の慣行、仕事の規模、内容程度などを総合考慮して相当額が決められます。

手付金とは、売買契約の締結時に支払われる金銭のことで、売買代金支払時に売買代金の一部として充当されます。また、民法上、当事者の合意がない限り、手付は解約手付であると推定されます(民法第557条第1項)。したがって、一般的な不動産の取引における手付金は解約手付であることがほとんどです。
解約手付は、解除した場合には、売主に払わなければならない(=没収されてしまう)お金です。買主の立場からいいますと、契約を解除したいときに、まだ、契約の履行に着手していない場合には、手付金を放棄して契約の解除をすることができます。

約款などで、請負代金の支払時期について定めていない場合、請負代金は、仕事の目的物が完成したときに、支払うことになります。
工事に不具合があり、完璧な状態ではないのだから、代金を支払いたくない、という話をよく聞きますが、裁判例は、工事が予定された最後の工程まで一応完了した場合には、工事は完成したものとして扱うという考えをとっています。
もし、本当に完成した工事に重大な欠陥があり、この欠陥を直さないと最終の工程が終了したとは言えないような場合であれば、修補や損害賠償をするまで、代金支払を拒むことができます。ただし、主張している瑕疵がわずかなキズである場合など、代金支払を拒絶することが信義に反するような場合には、代金支払を拒むことはできません。

注文者が指示した工事でも、それが、工事の瑕疵を是正するためのもので、合理的といえるのであれば、そもそもそれは、瑕疵の補修工事であり、追加工事代金を支払う必要はありません。
しかし、注文者の好みで、追加変更工事を行った場合には、代金額の明示がなくても工事代金を支払わなければなりません(いわゆるサービス工事として無償で行われることの合意が成立していた場合は別です)。
追加・変更工事代金が発生するかどうか、発生するとしていくらになるのかという点については、事後的に争いになることが多いため、トラブル回避のために、書面を作成しておくなど明確にしておくことが必要でしょう。

民法641条は、注文者は、工事が完成するまで、請負契約を自由に解除できますが、そのかわりに請負人に対して損害賠償をしなければならない旨規定しています。
注文者が請負人に対して賠償しなければならない損害は、住宅会社がすでに支出した費用(実費)と、仕事を完成すれば得たであろう利益(利益率)です。具体的にいえば、①人件費、②経費、③各種申請書類取り寄せ費用等の実費に、④当該物件について住宅会社が念頭に置いていた利益をプラスしたものになります。
請負契約約款の中に、「注文者の都合により、本契約を解除する場合には、請負代金の1割を違約金として請負人に支払うものとする」などの違約金条項を設けている場合もあるので、確認してみましょう。

民法上、完成した建物に瑕疵があれば、請負人に対して瑕疵担保責任を追及することができますが、特段の事情がない限り、瑕疵担保責任を根拠に慰謝料請求をすることはできません。
しかし、完成建物に瑕疵があった場合で、瑕疵の補修をしただけでは、償うことができないほどの特別の精神的苦痛を注文者が被ったといえる場合に、瑕疵の補修とは別に慰謝料の請求を認めた裁判例があります。
裁判例では、請負人が注文者に誠実な対応をしなかったことや、工事の瑕疵の程度や請負契約の内容を明らかにしなかったことなどの事実を根拠に精神的損害を認定し、50万円から200万円程度の損害賠償を認めています。

工事の結果、瑕疵が生じてしまったとき、その工事をした会社のことを信頼できないとして、別の会社に補修を頼むケースがあります。この場合、別の会社に頼むと利益が上乗せされ、もとの会社が補修するよりも高くついてしまうため、その補修費用が妥当かが問題になります。
瑕疵の修補は、工事を行った会社に任せるのが信義上の原則と考えられます。別の会社に補修を依頼した場合であっても、特別な事情がない限り、工事を行った会社が自ら修理するのに必要な範囲内の金額に限定されるとする説と、別業社にかかる費用を賠償するべきだとする説があります。

裁判になった場合、弁護士に支払う費用はとして「着手金」、「報酬金」、「手数料」、「日当」、「実費」などがあります。しかし、弁護士の費用は、個々の弁護士がその基準を定めることになっていますし、事件の内容や難易度、相手方に請求する金額等により変わってきます。
弁護士費用の目安となるものとして、日本弁護士連合会の旧報酬規定があります。具体的には、例えば、瑕疵の補修費用として500万円の賠償を求める場合、
着手金 500万円×5%+9万円=34万円(消費税別)
報酬金 500万円×10%+10万円=68万円(消費税別)
となります。

民法上、建物が完成してしまうと、契約の解除はできません。したがって、建物に瑕疵があるとしても、これを取り壊して新たに建て直してもらうということはできません。
しかし、判例は、建物の全体の強度や安全性に著しく欠け、地震や台風などの振動や衝撃を契機として倒壊しかねない危険性があり、技術的、経済的に見て、補修するよりも建物を建て替えるほかないという場合には、建物の建て替えに要する費用相当額を損害とし請求することを認めています。

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